語義の多様化2009/02/04

 言葉は生身の人間同士が意思の疎通を図るための道具として生まれた。基本は、喉や口を使って音声を発し、それを耳で受け止める音声表現である。意思の疎通には音声の受容と識別、そしてそれぞれの音声表現に対する共通の理解が欠かせない。
 言葉には、模倣され多くの人々に共通に使用されることによってその利便性が増すという側面もある。人数的な拡大は親族間の絆を強め、地域的な拡大は部族間の融和や共同体の成立に大きく貢献する。
 ところが同一の音声表現が多くの人々に使われ出すと、発声、受容、識別、理解の各段階に微妙な差の生じることがある。特に地域的な拡大が図られたとき、発声や理解に一定の幅が生じるのは避けられない。共有する人々が増え、使用する地域が拡大すればするほど理解の幅も拡がってゆく。風土や風習の差がこの拡大を後押しした。語義多様化の始まりである。