くら(4)2009/02/09

 身体中の胸と呼ばれる部位に接した空間も「くら」であった。こちらは「むなぐら」と呼ばれた。俗に「むなぐらをつかむ」といった表現がなされるためか、辞書にはこれを意識して「着物を着たとき、左右の襟の重なり合うあたり」とか「着物の左右の襟の重なり合う辺りの部分」など妙に着物の襟にこだわった説明を見かける。
 確かに無の空間だけでは「つかむ」ことはできない。着衣のような物の存在が必要だ。しかし「むなぐら」は胸部に接する空間全体を指す総称的な表現である。特定の物体やその部位だけを示す表現ではない。「むなぐらをつかむ」に即して言うなら「着衣の胸の辺り」か「胸の辺りの着衣」といった鷹揚な位置の理解が適している。

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