天然物と養殖物(6)2009/02/28

 促成と呼ばれる1年養殖では、芽胞体から造胞体に至る初期段階での成長を早めた点に工夫がある。種苗供給センターの培養液の中で育て、晩秋に海に入れる。そのため翌夏には1年目でも刈り取って出荷できる。一般に1年目の葉体は水昆布と呼ばれ、厚みが十分でなく味も劣っている。促成はこうした短所を補う方法であり、供給と価格を安定させようとする知恵から生まれた。この方法で収穫された真昆布には出し汁が取りやすいなどの評価もあり、消費者の選択肢を拡げる役割も果たしている。また2年養殖では天然物と同様、2年目の株から育った葉体を出荷するため間引きが効き、より良質の昆布づくりに役立っている。
 いずれにせよ真昆布の養殖を可能にしているのは北海道に残る豊かな自然と地形、そして海流の働きである。その生育には原生林の存在が欠かせない。原生林から流れ出す豊富な湧き水には良質の有機栄養分が多量に含まれている。地形のお陰で、これらの真水が汚染されることなく養殖場に達している。養分を海藻に供給する役目は海流が引き受ける。海流は養分を巧みに供給しながら養殖場の環境も守っている。養殖とは言え、こうした天与の環境が全て揃った上に実現していることを忘れてはならない。