啓蟄2009/03/06

 温暖化の影響で目の前の季節がどんどん早まり、暦の上の季節は月遅れの感がある。とりわけズレの大きいのが啓蟄までの気候だろう。啓蟄は中国由来の言葉である。「蟄」とは虫などが土中に閉じこもるさまを表し、「啓」は戸を開くの意である。つまり戸に喩えた地面が春暖により開かれて、冬ごもりしていた虫などがぞろぞろ地上に這い出してくるさまを称したものである。
 水が温み木々の根が動き始めると地中の虫たちは、やがて芽が膨らんで葉の茂ることを本能的に知っている。だから、うずうずしてくる。もうすぐ美味しい食事にありつけるかと思うと居ても立ってもいられない。旧暦とも呼ばれる中国渡来の太陰太陽暦は一年の始まりを立春と定め、次の雨水から啓蟄に至る半月間を土中の虫たちがこんな期待で夢膨らませる季節と考えていた。ところがいつの間にか季節はどこかで大幅に短縮され、立春には雨水の陽気を感じ、雨水には啓蟄の蠢動を目にする気候になってしまった。今年は思わぬ場所ですでに何度か桜の開花も目にした。もぞもぞ動き出した蛆虫や毛虫や青虫たちに、この気候変動はどう映っているだろうか。