大根の味(2)2009/03/08

 冬越しとは言っても、栽培する人や畑が違えば大根の味はかなり異なったものになる。畑が同じでも畝が離れていれば味が違うことを教えてくれたのは篤農家の徳さんだった。今月の初め、徳さんは自宅前の直売所に直径12センチ、長さ45センチを超える大根を1本200円で並べた。一抱えもある大きな大根だ。たちまちのうちに売り切れた。評判に違わぬ美味い大根だった。その2日後、ほぼ同じ大きさの大根が今度は100円で並んだ。これも昼近くには売り切れた。値段の理由は味である。かじってみると前のものよりやや甘味が浅かった。後から収穫した大根の畝は地下に岩盤があり、あまり深くは耕せない場所にあったそうだ。徳さんは実直さでも知られた人である。
 石山さんは野菜づくりが大好きな主婦である。庭の一角に広い畑をもち、半ば趣味で季節の野菜を育てている。農業にあまり興味のないご主人は会社経営に忙しく、さっぱり手伝ってくれない。仕方がないので石山さんは自分で耕耘機を動かして畑を耕し、せっせと堆肥を入れて土造りに精を出す。自分が食べるためでもあるから農薬のようなものは使わない。女手ひとつでは徳さんほどの巨大な大根はつくれないが、それでも直径11センチ長さ40センチを超える大物を時々近所の人に1本100円で分けてくれる。この大根の甘さと瑞々しさが徳さんの大根を上回りそうだともっぱらの評判である。徳さんもうかうかとはしていられない。