トイレが近い2009/03/23

 言葉の意味合いには絶対的なものと相対的なものとがある。「さもしい」や「いやしい」のように最初から否定的な意味合いで使われ常に前者の例に属するものもあるが、形容詞の多くはたいてい後者に属している。つまり一緒に使われる言葉によって意味合いが変わってくる。例えば「○○が近い」と言うときの「近い」はそれを聞いた人が○○をどう評価するかで変わってくる。駅のように多くの人に魅力的と映る施設であれば「近い」はプラスに働き、工場のように騒音や異臭の原因にもなりかねない施設の場合はマイナスに働く可能性が高くなる。この関係は「最近トイレが近い」の場合も同様である。歓迎すべからざる症状としてマイナス側に傾くことになる。
 とは言っても一緒に使われる言葉の影響も一様一律ではない。それぞれの言葉に対して聞き手がどのような印象をいだくかによって変わってくる。例えば「川が近い」や「海が近い」は、川で遊びたいと考える人や海に憧れをもっている人にとっては非常に魅力的な印象がある。しかし洪水や津波を恐れる人にとってはむしろ逆の印象を受け、できれば避けたい場所と感じるだろう。「トイレが近い」も実は個々の患者や家族が感じる近さであり悩みであって、医者の側から見れば患者が訴える症状説明のひとつに過ぎない。本当に近いのか・単に患者がそう感じているだけなのかは診察や検査をしてみなければ判断できない。
 相対的な言葉を使うときは単に「近い」と表現するだけでなく、その中身に応じて例えばトイレの回数や間隔、1回あたりの排出量、食事の量や中身、水分の摂取量などを具体的な数値で説明できるように日頃から心掛けておくと役に立つ。それが販売のための宣伝文句であれば、それに相応しい客観的な数字が明記されているか、客観的な数字の出所・責任の所在が明確にされているか、購入の前に確認してみる必要がある。健康でも買い物でも、こうした相対的な意味合いをもつ言葉に踊らされないことが無用な諍いを避けるコツと言えるだろう。