春さらば(1)2009/04/06

峰の桜
 この題名に「そうかもう桜も終わりか、もうすぐ新緑の季節だな」と思った人は是非この先もお読み下さい。テレビ東京開局45周年記念ドラマ「春さらば」をご覧になった方はおさらいのつもりで、もう一段知識を深めましょう。「春さらば」という日本語には、かつて2つの意味があったのです。ひとつは「春が行ってしまうなら」、もうひとつは「春になったら」です。
 ドラマの中ではこの点が重要なポイントになっていて、女優の市原悦子さんが「ほら万葉集にあったでしょう」と言って解説していました。ちょうど民放の開局記念の時期と重なり多くのテレビ局がたくさんの記念ドラマを放送していましたが、果たして質が高く後味も悪くない、観て損したと感じない番組がいくつあったでしょうか。いま世代交代による番組の劣化はNHKも民放も関係なく、報道も制作も区別なく進行しています。
 そんな中で、この井上由美子さんの脚本は懐かしくも豊かな日本語表現に注目し、それを家族と介護という現代的な最も難しい問題に絡めて巧みに仕上げていました。もちろん3人のベテラン俳優(山本學、原田芳雄、市原)と一人の若い女優(夏川結衣)の普段着に近い演技にも支えられていますが、何よりも脚本の水準が高いこと・前向きな制作態度が久しぶりに見応えのあるドラマに仕上がった真の要因と言えるでしょう。

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