新社会人に贈る言葉182009/04/27

 《トヨタの教訓に学ぶには》

 この欄で取り上げたトヨタの教訓は2つありました。ひとつは「複眼的思考を失うな」であり、もうひとつは世界一が視野に入った途端に山を見失ってしまったことへの反省です。後者では「淮南子」から「鹿を逐う者は山を見ず」を紹介しました。では、この2つさえ守っていたらトヨタの将来は安泰でしょうか。もう赤字転落はないでしょうか。これが今日のテーマです。
 しかし、この先は皆さんそれぞれがお考えいただきたい問題です。将来、職場の幹部を目指すにしろ、あるいは技術者や職人的な道を選ぶにしろ、この問題はいずれの場合にも将来の課題としてみなさんに重くのしかかってくるはずです。もちろん、ご自分の生き方の問題としても考えておく必要があるでしょう。ヒトの生命は有限です。どんなに長く生きても後80年あるかないかでしょう。そのうち企業や団体に属しているのは初回にも述べたように半分以下の40年程度です。
 一方、法人としての企業や団体の存在は永遠でなければなりません。組織を預かる人々が自分の在職中だけを考えて経営方針を決めたり、常に在職中はよかれ(後は野となれ)という視点で物事の判断をするようになったら、その組織はどうなるでしょうか。戦争による大破壊という未曾有の危機を経験した日本は300万を超える戦死者の尊い生命と引き替えに戦後、驚異的な右肩上がりの復興を果たすことができました。
 しかし60年余を経て、痛ましい犠牲の上に築かれた貴重な遺産もあらかた食い尽くしてしまいました。これからは若い皆さんが、皆さん自身の手と足で額に汗しながら新しい社会を切りひらいてゆかなければなりません。価値観の転換も必要でしょうし、何よりも組織の意味を問い直す必要があるでしょう。なぜ多数の人間が参加しながら、目も頭も一つしかないような視野の狭い行動を選んでしまうのでしょうか。いま流行りの言葉を使えば、組織としてのセイフティーネットはどうなっていたのでしょうか。まずこの点から考え直す必要があるのです。
 この欄は今回で終了し、今後は社会人一般を対象にした「たまの一日一言」を次のアドレスで開始します。引続きお立ち寄りいただければ幸いです。

http://blogs.yahoo.co.jp/mst_tamano