■捨て石--新釈国語2009/09/14

 不要になり、そのまま元の場所に置いたのでは邪魔だからと他の場所へ移して所有権も放棄した石のこと。転じて様々な分野でいろいろな意味に使われるようになった。大別すると原義に近い意味合いを遺すものと、捨てることによって逆に利益や効果を得ようと企てるものとがあり、傾向としては捨てるという行為の意味合いが薄れて比重が将来の利益獲得に傾きつつあると言える。主な例は以下の通りである。

【原義に近いもの】
○採石場で、目的とする鉱石ではないため捨てる石。

【ある目的のために捨てるもの】
○囲碁で、作戦上わざと相手に取らせることにした石。

【ある目的のために利用するもの】
○河川や海岸などの工事で、流水や海水対策として川底や海中に投げ入れて基礎工事を容易にするための石。
○庭園の風景をつくるために、所々に配置する石。景石ともいう。

 なお「自分が捨て石になる」とか「捨て石になる覚悟で」などという場合は河川工事などで沈める石に近い意味で使っていると推測されるが、結果として原義と同様の捨て石になるか、それとも効果的に働いて将来の利益に繋がるかを自分では決められない点に特徴がある。非常に無駄骨を折る可能性の高い行為と言わなければならないが、もし後事を余人に託すつもりがなくて捨て石と言うのであれば、それは聞く側を欺く偽りの発言となる。