◆旗幟鮮明(2)2009/11/04

 生涯学習というのは誤解を恐れずに云えば「人間は死ぬまで勉強しなさいよ」ということだろう。文部省はそのために教育予算を確保して国民の勉強を手助けしましょう、と言い出したのである。文部省が推し進めてきた文教政策の柱は学校教育と社会教育の2本立てであった。これを改め、後者の社会教育を生涯学習に呼び変えたのである。背景には経済の高成長に助けられた進学率の急激な上昇があった。

 アジア太平洋戦争に敗れるまで日本人の識字率は確かに高かったものの教育水準としては義務教育止まりが殆どだった。敗戦後、義務教育を終えて上級学校に進学できる幸運な若者は10人に2人しかいなかった。残りの8人は働きながら学ぶしか、義務教育終了後の学習機会がなかったのである。それを支援しようと社会教育法制が整備され、各地に公民館や図書館や博物館・美術館などがつくられていった。

 しかし高校進学率が昭和49年(1974)に90%を超え、大学進学率も翌50年(1975)には38%に急上昇して日本人の高学歴化傾向が顕著になると社会教育に対する需要は相対的に低下せざるを得ない。10代後半の若者には高校があり、高校の図書室があり、大学や大学図書館で学ぶことも夢ではなくなった。従来の社会教育政策は根本的な見直しを迫られることになったのである。折しも海外ではlifelong learning(生涯学習)の必要性が叫ばれ始めていた。(つづく)

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