○干し柿--晩秋2009/11/17

 富有や次郎のような甘柿は木からもいだものをそのまま食べるが、平種無しのような渋柿は焼酎を振りかけて数日間密封し、渋抜きをして食べる。昔は皮なども剥くことがなかった。蔕(へた)だけ取ってかぶりついた。今でも歯だけは丈夫なつもりだが、それでも大抵は皮を剥いて食べる。その方が果汁を多く感じる。

 干し柿は渋抜きというよりも保存のためにつくったと記憶する。柿の木は裂けやすいので取るのも時に命がけとなる。太い細いの問題ではなく樹幹の繊維の方向に因るのだろう。だから木に登って取る場合にはあらかじめそのように枝振りを考えて仕立てる必要がある。つまり工夫次第で簡単には裂けない枝に仕立てることが出来る。


 しかし取る以上に面倒なのが皮剥きである。一つひとつ綺麗に剥きあげなければならない。根気の要る仕事である。早めに野良から帰り、日が暮れるとすぐに夕飯を済ませて家族総出で取りかかった。明かりといえば炉端で燃える火と、天上に吊された裸電球だけである。それでも手元はよく見えた。大人のする世間話を聞きながら、見よう見まねで器用に両手を動かして皮剥きを手伝った。豊作の年は一苦労だが、それでも眠たくなる頃には山と積まれた柿がみんな皮を剥かれ荒縄に吊されるのを見ることができた。俳句では、干し柿(干柿)以外にも柿干す、柿吊す、つるし柿など色々な表現が用いられている。

  その端に今日吊したる柿の色 渡辺満峰