◎季節の言葉 青木の実2010/01/08

 アオキは関東地方の山に入れば樹木の下など至る所に自生している。だから珍しくも何ともないとも言えるのだが、知人の青木君はこれをファミリーマークと称して広い屋敷の要所要所に植えていた。


 ところがある時、この見慣れたはずのアオキにも実は色々変種があると知って青木邸を訪れると案の定、山取りの樹木ばかりではないことが分かった。珍重され幕末には海外にも渡ったと物の本で読んだことのある繊細な斑入りのアオキが大きな庭木の陰に植わっていた。よく見れば、この仲間にもまた色々な斑の入り方があるようだ。

 見かけは普通のアオキと差がないのに、黄色の実を付けるアオキも木戸の近くにあった。古木というか、幹周りが人の腕より太い老木もあって驚かされた。他にも丹念に観察すればきっと多くの変種があったに違いない。凡俗には窺い知れない高等な趣味もあるものだと感じ入ったことを思い出す。

  青木の実学者の妻の墓小さし 安立恭彦