○白梅日記122010/01/16

 梅は春の季題ですが、私たちのようにまだ冬のうちから咲き始めるせっかちな仲間も少なくありません。一番気が早いのは師走の声を聞くともう咲き始めます。俳句には冬至梅(とうじばい)という季語もあるそうですが、とてもそれでは間に合いません。あまり早く咲き出すと寒の頃には盛りを過ぎてしまいます。だから私たちとの咲き競べは気の毒だと、これもメジロ君が教えてくれました。


 寒の時期に咲くのは寒梅と呼ばれるそうです。先日、老主人がお友達に「遅くなりましたが、ようやく我が家の寒梅も二三輪咲き始めましたから例年通り今年もコシノカンバイで花見をいたそうと存じます…」と電話をしていました。例の姉花はこれを「腰の乾杯」と聞き違え、「ねえねえ腰で乾杯ってどういうこと。誰か分かる…」と周りの妹たちに尋ねていました。


 私たちの枝では、これを聞いた兄姉が笑い転げて思わず蕾を落とすところでした。兄姉が言うには、これは古新聞のような寒梅という意味だそうです。時々小さなトラックでやって来る塵紙交換の小父さんが古い新聞を集めて、確かに「コシ」と呼んだのを覚えています。道路に突き出た枝の兄姉も肯(うなず)いていました。きっと私たちのことを身内のつもりで「色のよくない古新聞のような梅ですが」と、謙(へりくだ)って言ったのでしょう。あまり誉められると咲きにくいものですが、古新聞が相手なら引けを取る気遣いはありません。心おきなく咲くことができます。

  寒梅の固き蕾の賑しき 高浜年尾