◆ホームページの品格2010/02/06

 立春を過ぎ本格的な梅見(うめみ)の季節を迎えた。陰暦二月は梅見月でもある。だが最近は梅見などという言葉は滅多に聞かれなくなった。もっぱら観梅か、あるいは梅まつりと呼ばれている。かつて蕪村が詠んだ「さむしろを畠に敷て梅見かな」の句から想像される長閑で鄙びていて日溜まりの温もりまで感じさせるような、そんな風景を期待しても無理なのかも知れない。


 そう思いながら、試しに梅林や梅園の様子を知ろうと市町村や観光協会などが運営するホームページをのぞいてみた。そこで感じたのは、どうやらホームページにも品格というものがありそうだという点である。品格についてはいずれ「新釈国語」で検討しなければならない言葉だろうが、画面にそのページが表示されたときの印象が実に種々雑多であることに気づいた。祭りらしく賑やかに騒々しくその雰囲気を伝えようとしているページや日用品市場さながらにアイコンのごった返すページを多く見かけたが、中には落ち着いた画面構成を心がけたり梅の印象や雰囲気を大切にしていると感じさせるページもあって面白かった。まさにそれぞれのページが、それぞれの町や地域の土地柄を伝えているのである。


 画面に映し出されるものは一般に情報と呼ばれ、文字と画像で構成されている。これに時には音声の加わることもあるが、それらが総合して訴えかけるもの、あるいは全体として感じさせる雰囲気、それがこの例で言えば土地柄ということになるだろう。しかもそこに何らかの品(ひん)を感じさせるためには、やはりホームページを制作する側にも、それを発注する側にも日頃からこうした点に対する自覚がなければならない。洗練されたページなどと口で言うのは簡単だが梅は工業製品ではない。生き物である。同じ梅と言っても生育している環境がみな異なる。空気が違うし、光が違う。その年々で微妙に変化もしている。育てている人の顔は違うし、思いも違う。もちろん歴史も違う。自動車や電化製品と同じ感覚では人を引きつけ、見る人を堪能させる梅のページは創れない。


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