■ショック--新釈カタカナ語2009/06/17

 一般には、予想外の出来事に遭遇して精神的に動揺することをいう。しかし医師など医療関係者がこの語を発した場合は、生命に危険が及んでいることを意味する。すなわち末梢の急激な血液循環不全により血圧の低下、頻脈、意識の混濁、感覚鈍麻、呼吸困難などの諸症状を呈する状態のこと。緊急の医療処置が必要な状態であり、処置の遅れは死に繋がる可能性が高い。原因は短時間に大量出血して引き起こされる出血性ショック、スズメバチなどの毒針に刺されて引き起こされるアナフィラキシーショックなど様々なものがある。shock(英語)。
 今やこの言葉は日常語と化し普段の会話において軽い意味でよく使われるが、そうした日常の用法とは別に生命に関わる重篤な状態を指す医療用語でもあることに注意したい。

○いずれ菖蒲か--夏便り2009/06/17

 古来、美しく優劣の付けがたいものについて選択に迷うさまを「いずれ菖蒲か杜若」と称してきました。アヤメもカキツバタも同じアヤメ科に属する多年草です。単に似ていて区別ができないことだけを言うのであれば「いずれ狸か穴熊か」でもよいわけです。それをわざわざアヤメとカキツバタを持ち出したわけですから、そこを汲み取って上記のように美しく優劣が付けがたい、選びがたいとするのがよいでしょう。

  菖蒲見るその横顔に昔あり  深谷快山

○十薬は清々し--夏便り2009/06/17

 十薬(じゅうやく)はドクダミの別名です。名前の由来は薬草としての効能の多さに因るとも聞きますが、梅雨時の草むらの中で見かける白十字を思わせる可憐な姿も少しは影響しているように感じます。しかし、その清々しいばかりの清楚な出で立ちとは裏腹に強烈な異臭を放ちます。一度手に触れれば臭いが付いてなかなか消えません。生命力が強く、地上と地下の2つを使って勢力を伸ばします。そのため根絶やしは難しく、多くの人から目の敵にされる植物です。
 そうした生命力の故にか、臭いを我慢して抜き取り天日でよく乾燥させると異臭は和らぎ、煎じて飲めば数々の薬効をもたらしてくれます。夏の弱った胃には格好の民間薬とされ、常用する人も多いようです。初めてドクダミ茶なるものに接したのも、そうした愛飲家のお宅でした。麦茶と誤って冷蔵庫から取り出し、大きなコップに注いでくれました。口に含んだときは驚きましたが、今では夏が来ると時々飲んでみたくなります。どこかに健康を感じさせる味がするから不思議です。

  どくだみや真昼の闇に白十字  川端茅舎

■危ない橋--新釈国語2009/06/17

 人が載ったら落ちるかも知れないと誰が見ても感じるような危険な橋に無理を承知で足を踏み入れ渡ること。橋は川や谷など道が途絶える場所に架けられる。つまり橋の下は川であり谷であって、橋が壊れて落ちれば命を失うこともある。この言葉はそうした危険を十分承知の上で、しかしその危険を忘れさせるほどの魅力に負けて、もしくはそんな危険には構っていられないほどの必要性や緊急性があって渡るときに用いられる言葉である。
 世の中には磐石そうに見えても少しの揺れであっという間に崩れ落ちてしまう橋もあれば、脆弱そうに見えても自動車の揺れくらいではなかなか崩れ落ちない丈夫な橋もある。吊り橋のように、乱暴に歩くと揺れて今にも切れそうに感じる怖い橋もまだまだ残っている。危ない橋の通行事件を根絶するためには、地元の人がそうした危険性のある橋を普段どう見ているのかよく確かめ、またそうした橋を渡ったことのある人に対し渡ることにどんな魅力があったのか、どんな必要性や緊急性があって渡ったのかを厳しく尋ねて、ひとつひとつ対策を講じなければならない。それが橋の管理者たる者の務めであろう。