■見切り発車--新釈国語2009/08/03

 ある施策についての議論や検討が未だ十分とは言えない段階・状態にある中で結論だけを急ぎ、実行に踏み切ること。元は終戦後の混乱期や高度成長期の通勤時によく見られた風景で、一部の乗客を駅のホームに残したまま満員の列車や電車を発車させることをいった。見切るの原義は全体をくまなく見ることだが転じて、全体をくまなく見たかどうかを問う前に見込みがないと諦めること、全体をよく見ることなく形勢の判断をすること、特に形勢不利の判断を下すことを指すようになった。まず結論ありきのお役所仕事や官庁の各種審議会などによく見られる現象・手法である。なおデフレ傾向が続く中で、小売り店が形勢不利の判断を早めてリスクの軽減に努めようとする販売手法は見切り販売と呼ばれ、見切り品はそうした際に価格引き下げの対象となる商品をいう。

 ⇒http://atsso.asablo.jp/blog/2009/07/19/ 見切り販売

○夏菊(2)--野の花々2009/08/03

 夏は冷たい素麺が好まれる。薄味のあっさりした漬け物も嬉しい。この時期に咲く夏菊はそうした日本人の心を察しているかのように、趣はあっさりとして匂いも薄いものが多い。だから同じ頃に咲く蝦夷(えぞ)菊とかアスターと呼ばれる園芸種に比べると、どうしても華やかさで負けてしまう。
 しかし園芸種にはない、野の花ならではの風情や侘びしさがある。園芸種というのは確かに綺麗だが、予備校や学習塾にせっせと通って受験術を身につけた子どものように、化粧品会社の上玉顧客のように見かけは秀才や美人でも、何処かに人為的なものがあって違和感を覚える。(了)

  夏菊のうすむらさきが語りかけ まさと

○白蓮(1)--盛夏2009/08/03

 白いハスの花は白蓮(びゃくれん)と呼ばれ、春に咲く白木蓮の異称「はくれん」と区別される。白木蓮の白にも梔(くちなし)の花の白にもどこか厚ぼったいものを感じるが、ハスの花の白蓮にはそうした重たい感じはない。これが、この花の白さの真骨頂であり、汚れのない純真な心の象徴と言われる所以(ゆえん)であろう。
 写真は開き始めて間もないハスの花である。朝のお勤めが「南無妙法蓮華経」と響く本堂の前で運良く目にすることができた。(つづく)

  蓮白しわが行末を想ふとき 瀬川あゆ女