○吾亦紅(1)--野の草花2009/09/12

 子どもの頃、植物の名をワレモコウと聞いても取り立てて感慨を覚えることはなかった。草だろうか、花だろうかと不思議に思っただけである。それが、長じて書物の中に吾亦紅の3文字を見つけたときは、これぞまさしく先人の知恵、何と優雅なと感じ入った。
 多年草でもあるこの植物の漢名は地楡(じゆ)という。褐色を呈し太くて逞しい根っこの薬効に注目したが故の呼称であろう。それに引き替え、わが和名の何と優雅なことか。しかも漢文調に「ワレモマタカウナリ」とは実に愉快な命名ではないか。と独り悦に入って喜んだ。発見でもあった。そして紫式部が「源氏物語」の中で、この植物にも言及していることを知った。
 源氏の話は明日に回し、今日は藤原忠俊の娘が白河皇女郁芳門院に仕えて安芸と呼ばれたときに詠んだ和歌を紹介する。鳥羽天皇后にして後白河天皇生母と言われる待賢門院にも出仕したと伝わる女性だから、時代としては紫式部より100年近く後のことであろう。

  鳴けや鳴け 尾花枯れ葉の きりぎりす われもかうこそ 秋は惜しけれ 郁芳門院安芸

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