◆くりのきむらのゆうびんやさん2009/09/19

 この季節になると決まって思い出す絵本があります。と言っても自分の作品ですから、ちょっと格好のつけすぎですね。実はどうしても腑に落ちないことがあるのです。

 この絵本を出版したのは2004年9月です。今年の夏に政界を引退した小泉純一郎氏がまだ総理大臣をしていた頃の出来事です。その頃の小泉内閣は郵政民営化を目標に大奮闘中でしたが、自民党内では民営化反対の抵抗勢力と呼ばれる人たちが多くて苦戦を強いられていました。ちょうどその頃に完成した絵本です。もちろん郵政民営化とは何の関係もありません。

 ストーリーは動物たちが助け合って暮らす「くりのきむら」という小さな村で郵便局を開き郵便配達もしている、うさぎさん夫婦の機転を利かせた働きぶりを扱ったものです。大雨による災害と、栗の実のご馳走がいっぱい登場します。孫に会いたくて仕方ない狸のお婆さんとか、長生きをしすぎた亀のおじいさんも登場します。絵本というよりも、本格的なストーリーも楽しめる幼年童話に近い内容といったところでしょう。

 ところが、どういうわけか図書館も小学校もさっぱり買ってくれません。買ってくださるのはもっぱら個人の方が中心でした。郵便配達を定年でお辞めになるという方がストーリーに感激して、まとめて買って近隣の児童館や保育所に寄付してくださるというようなことがいくつもありました。

 しかし、どういうわけか今に至るまで、全国に4000近くもあるという図書館ではその数分の一も購入してくれません。ある時、疑問に思った知人が東京郊外の町の図書館で尋ねました。

「『くりのきむらのゆうびんやさん』という絵本を読みたいのですが…」すると返ってきた答は何と、「出版社はどこですか?」だったそうです。
知人は即答できなかったので、帰宅して調べ、電話で伝えたところ
「ああ、そういうあまり聞かない出版社の本はウチでは買いませんね。」と、自信たっぷりの返事だったそうです。
「えっ……?! ……?!」
「大切な市民の税金を使っているわけですから…。」

 図書館にはマンガや推理小説や文庫本なんかもたくさん入っているけど、みんな出版社が有名だから構わないのか。そんなものなのか図書館って、と知人はそのとき初めて、市役所や町の図書館で働く人たちの仕事の秘密というか秘訣を知ったそうです。

 でも何だか変ですよね。

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