○鶏頭(2)2009/10/10

 鶏は「にはつとり」が短く縮まったものである。普段から庭にいる鳥、つまり飼い鳥の意であり、歴とした和語である。一方、鶏頭は漢名由来の語である。鶏は「鶏群の一鶴」「鶏口となるも牛後となるなかれ」など漢語を知る人には馴染みの深い語である。列島の先人がこの植物に初めて接したとき、鶏は誰もが知る飼い鳥だったと考えて間違いない。

 では鶏頭は中国から伝わったのだろうか。どうやら中国から来たものと朝鮮半島経由で伝わったものと二つの道があったようだ。その証拠に、鶏頭には今では使われることのない「からあゐ」という和名があって、万葉集にはその歌が収録されている。作者が山部赤人というのも興味深い。しかし「からあゐ」がなぜ紅い色の鶏頭になるのか、その話はまたの機会に譲りたい。(了)

  わがやどにからあゐ蒔き生ほし枯れぬれど懲りずて亦も蒔かむとそ思ふ 山部宿禰赤人

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