◆履霜堅氷至 気の早い話2010/02/08



 先月、白梅日記の中でシェリーの詩について紹介した。例の「冬来たりなば春遠からじ」の句が出てくる詩のことだが、寒の季節が開け立春も過ぎたというのに日本列島は各地で大雪や地吹雪に見舞われ雪崩の被害も出ている。心は暦に期待しても、日々の気象は冷厳な自然界の法則に従って変化するのみだ。決して我々の期待を優先することはない。

 そう思っているとき、秋から冬に至る季節の移り変わりを表した警句を見つけた。今度は英詩ではなく、中国周代の占いを集める易経に記された言葉だ。春から夏を通り越してしまい、いささか気の早い話にはなるが忘れないうちに紹介しておこう。

  履霜堅氷至(霜を履みて堅氷至る)

 堅氷は堅い氷の意。堅い氷の張る寒く冷たい真冬の季節が到来することを表している。履霜は、そうした季節の前には必ず寒さの訪れを予測させる霜の降りる時期があるものだ、霜を踏んだらそれが寒い冬の予兆であることに思いを致さなければいけないの意である。堅き氷は霜を履むより至る、と訓んだ書もある。全体として大事の前の小事を見逃すなの意とされる。いずれにしても冬が来て絶望するのも愚だし、霜が降りたくらいで騒ぎ立てても仕方がないという気もする。

 ⇒http://atsso.asablo.jp/blog/2010/02/01/4850612 季節の言葉 凍る・氷(2)

 だが寒い冬の到来と秋の霜との間には大きな差がある。冬なら春の到来までに長くても3ヵ月の辛抱で済むが、霜の場合は春の到来まで4ヵ月も5ヵ月も寒い季節を耐え抜かなければならない。耐える時間の長さに開きがある。それくらいは知っておいてよいだろう。換言すれば春が近いと浮かれていると半年後には必ず秋が来るのだぞ、その時に十分な備えがないとその先の季節は到底乗り切れないぞ、と教えているのである。