◎季節の言葉 筍・竹の子(2)2010/04/18

 グラム○○○円と表示して量り売りする店もあれば、選り取り見取りの均一料金で大量に販売する店もある。どの店にも共通するのは商品名の表示が「筍」ではなく「竹の子」と3文字にしている点である。鶏卵が玉子と書いて販売されるのと似ている。近ごろは客の方でも筍と表示されたのでは読めない人が多いかも知れない。

  筍の秤したゝかに上りけり 田村木国

 筍は竹冠+旬(じゅん)と記すが、旬は他の多くの漢字に先駆けて朝鮮半島経由で日本に伝わった文字のひとつである。勹には「めぐる」の意があり、これと日を組合わせることで甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十干を一巡りする意となり、十日を単位とする数え方に用いられる。上旬、中旬、下旬だけでなく、旬報とか旬刊とか旬日などよく目にする漢字だろう。

 ところで筍という漢字の音(漢音)は「じゅん」ではなく「しゅん」である。しかし旬は日本では「じゅん」が先に音として定着したのでこれを「しゅん」と読む人は少なく、もっぱら慣用音の「じゅん」で通っている。


 興味深いのは、この字が十日の意ではなく野菜や果物や魚などの味が最もよくなる時節の意としても使われることと、その際には慣用音の「じゅん」ではなく本来の漢音である「しゅん」が用いられることである。実は「しゅん」という音には春(しゅん)に通じる響きがあり、春先に芽吹いた柔らかくアクの少ない新芽を好んで食した列島の先人たちの生きる知恵がこの文字に目を止めたのではないだろうか。そして地中からほんの少しだけ頭を出した竹の子こそ、この旬のイメージを象徴する食べ物ではないかと思うのだが考えすぎだろうか。(了)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック