○吾亦紅(3)--野の草花2009/09/15

 ワレモコウには異称が多い。旧かなではワレモカウだが、これを漢字にすると吾木香、割木香、我毛香などと急に異表記が増える。ワレモコウという音にこだわらなければ既に紹介した漢名の地楡があり玉皷(ぎょくこ)があり、和名ではあやめたむ、えびすねとも呼ばれるらしい。但しこれらはいずれも請け売りであって、ワレモコウと地楡以外の保証はできない。それに吾亦紅のような知恵や優雅さを感じることもないから調べる気にもならない。
 植物の分類というのも不思議な分野である。どこに分類の視点があるのか、基準があるのかさっぱり分からない。だからワレモコウがなぜバラ科なのか全く理解できない。しかし理解できなくても、ワレモコウに花びらが無くても、あの枝分かれした先端に付く何というか小指の先のような細長い玉は花としか表しようがない。不思議な魅力を備えている。秋の空気に実に似合った植物だと思う。(了)

  吾も亦紅なりとついと出で 虚子

■猟官運動--新釈国語2009/09/15

 大臣・副大臣・長官・次官・局長などに象徴される高位の官職に就けてもらうことを狙って任命権者に対し様々な方法で行う一種の就職活動。広く一般企業、各種団体、大学、大病院などにおける役職についても用いられる。法的な規制も届け出の必要もないため実際にどのような活動が行われているかは不明である。一般的には自薦型(直接売り込み型)・他薦型(間接売り込み型)・贈答作戦型・胡麻擂り型などの形態と、それらを巧みに組み合わせたものが中心ではないかと推測される。活動を成功させるためには何よりも任命権者の思考様式、生活習慣、趣味・嗜好、性癖、家族構成などを知る必要があるとする意見も見られる。しばしば官職に就くことだけが目的となり、その地位を得た後の仕事ぶりが曖昧にされるため、官庁・企業・大学を問わず猟官運動を腐敗や堕落の原因と考える人は少なくない。