○夏の終りに2009/09/09

 めっきり秋めいてきました。秋めく、今めく、時めく、色めく、よろめく……。日本語にはいろんな「めく」があります。「めく」は名詞だけでなく副詞にも付きます。形容詞や形容動詞の語幹にも付きます。そして○○らしくなる、○○のような状態になるという意を表す動詞をつくります。それだけではありません。「おめかし」も「めかす」も皆この「めく」から派生してできた言葉です。
 この「めく」を漢字で表そうとした人がいました。考えた末に選んだのが「粧」の字でした。米偏は白粉(おしろい)を表し、つくりの庄には容貌をつくるとか整えるなどの意があります。しかし日本語の「めく」にはそうした人為的な意味合いはありません。敢えて言うなら天のなせる業、神の御手による変化が「めく」であり、それを真似て何とか天のなせる業に見せかけようと努力するのが「めかす」ということでしょうか。

 ひまわりは夏を象徴する草花です。昔はどこに行っても同じ形のひまわりが咲いていました。が、今ではいろいろな品種を目にするようになりました。今日はその1回目です。ひまわりと言えばゴッホ、ゴッホと言えばひまわり、というくらい日本人にとっては馴染みの深い画家と画題です。

  向日葵が好きで狂ひて死にし画家 虚子

○草木瓜--実りの秋2009/09/09

 ボケの実は漢方で用いられる。そのためか中国では花ではなく実に注目しての命名となった。草ではなく木に瓜形の実が生る。これが呼称の由来であろう。しかし中国原産と言われる木瓜(ぼくか・もくか)と、日本の山野に自生する草木瓜(くさぼけ)とがどれほどの差のあるものか実はよく分からない。
 物の本には木瓜は人の背ほどの高さになるとか庭木に用いられるなどとあるが、盆栽に仕立てた物などを見ると草木瓜との区別は容易でない。強いてあげれば草木瓜の花が薄い朱色混じりの如何にも田舎育ちといった白色系であるのに対し、到来物の園芸種には紅色あり、白あり、咲き分けありと都びている点だろう。
 写真はまだ夏の盛りの草木瓜の実を撮したものである。具合よく日に当たり、綺麗に色づいている。蔕(へた)の部分が見えなければ青リンゴと紛うばかりの色や形である。こうしたものはそう多くない。もし薄紅色がなくて表面が薄黄色の土色に近ければ今の季節、長十郎や幸水といった梨の実と間違えるかも知れない。
 なお秋になれば黄色く熟してよい香りがするとか酸味が強いなどと記すものを見かけるが、目にする草木瓜の実はどこまでも石のように堅く、さほど香りがよいとも思えない。もっぱら25度の焼酎に入れ、氷砂糖を加えて木瓜酒にして楽しむ。年数が経つと紅色の濃さがどんどん増して独特の赤黒い色に変る。そして口当たりもどろっとした感じになり、ややクセのある薬のような味がする。この辺に漢方に選ばれる秘密があるのかも知れない。