○白梅日記132010/01/17

 日記を続けるというのはなかなか難しいものらしい。昨日は老主人が花見の予定まで立ててくれたのに、その日を待たずに日記が終るかも知れない。大抵昼過ぎに見えるカメラマンが今日はいつもより遅れて日が傾き始める頃に現れた。そして撮影は大寒までだろう、と言い残して帰った。


 理由は教えてくれなかったが、どうも新年から目出度くない出来事が相次いでいるようだ。番外で顔を見せた寒紅梅の爺さんは昔は丁髷(ちょんまげ)姿の侍とも付き合っていたと噂される長寿の双幹梅だし、老主人が大好きな水戸の黄門様の本物を見たと自慢する臥龍梅さえあるというのに、人間は百年も経たないうちにほとんどが消えてしまう。


 今朝オギャーと生まれた赤ん坊でも女の子で86年、男の子なら80年は難しいと、老主人が「簡易生命表」と記された紙切れを眺めながら呟いていた。脚が地面に潜り込まず、あちこち動き回れるのは羨ましいとも思ったが、ただ寿命をそこら中に撒き散らしているだけの至極せっかちな生き物のようだ。

  寒の梅蒼空に浮く二三輪 滝春一

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック