○芒・すすき(2)--晩秋2009/11/23

 薄田泣菫(詩人)、薄田研二(新劇俳優)など「薄」を用いる名字はあるし、札幌には薄野なる著名な繁華街もある。だがよく考えると、この文字は「薄い」という言葉にも使われている。ススキと薄い、妙な取り合わせと感じないだろうか。

 すでに秋の七草として尾花の項で触れたように芒(ぼう)も薄(はく)も草を表す文字には違いないが、これに「すすき」という訓を与えたのは列島の先人達である。それが生粋の倭人であったか帰化人達の3世4世であったかは分からない。いずれにせよ秋の原野に繁茂するこの植物を表すに相応しい文字と考えた上での訓であったろう。

 だが漢語の例を見ると薄氷、薄利、薄倖、薄情、薄謝など薄は専ら数量的に僅かな様を表す文字として使われている。不思議なことに、肝心のススキを連想させるものがさっぱり見あたらない。原義の大半が失われてしまったのかも知れない。


 一方、芒の場合は茫洋や茫然といった漢語も存在はするが、カヤを意味する芒茅(ぼうぼう)がある。カヤは晩秋の頃、よく伸びた丈の長いススキを刈って乾燥させ屋根を葺く際の材料とするときの呼称である。他にもイネ科の植物を表す芒種がある。ススキはイネの仲間だし、芒種は二十四節気の一つにも数えられる。これならススキという訓を充てられても不自然さはない。(了)

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