新社会人に贈る言葉062009/04/09

 《ビジネスにしたければ数字で表せ》

 世の中、いつも数字や理屈だけで割り切れるものではありません。義理もあれば人情もあり、公共サービスや慈善事業もあります。しかしビジネスの場合は違います。どんなときでも「個人的な感情をまじえない、金もうけの手段としての仕事」(大辞林)でなければなりません。つまりその商売でいくら儲けが出るか、見込みの甘さ辛さはあっても、とにかくそれを数字で具体的に説明できるのがビジネスです。
 利益とは単純に言えば売上額から原価と経費を引いたものです。経費は直接経費と間接経費に分かれます。直接経費はその商売だけに要する費用です。これに対して間接経費は企業全体の費用を按分比例するのが一般的です。そのため中身も金額もいろいろですが、社員や役員の人件費、家賃・光熱費、通信費・送料、倉庫代、全体広告費くらいは必要でしょう。企業の経営には他にもいろんな費用がかかります。この点だけでも研修中にしっかり教わっておくとよいでしょう。
 さて2009年4月8日の「朝日新聞」朝刊を見ると8面に、高さ100センチの不動明王立像の全面広告が載っています。これを題材に、どうやってビジネスにするか頭の体操をしてみましょう。頒布価格は税込で一括払いが157,500円、限定20体と表示されています。販売数が少ないので売上は完売を前提に考えます。新聞広告など販売経費としていくらまでなら支出できますか。原価として作者に払えるのはいくらまでですか。間接経費の負担はどの程度まで可能ですか。
 そして最後に、その数字で同僚や上司を説得できるか冷静に考えてみましょう。個人的な感情を絡めて公正を欠く関係をつくったり、そうした事情を優先させることを情実といいます。情実はビジネスの妨げとなるだけでなく企業を滅ぼし、公共サービスを私物化し、慈善事業の動機や意義を疑わせます。皆さんの人生・これからの生き方がそうした情実の世界と常に無縁であるよう願うものです。

春さらば(4)2009/04/09

今日も晴天、お山は満開
 万葉集の序(つい)でに万葉仮名の話もしておきましょう。万葉仮名とは平仮名や片仮名が生まれる以前の時代、つまり文字としては中国から伝わった漢字だけが利用できた時代に、当時の人々が日本語を書き記すために考え出した方法です。万葉集の和歌は、いずれも漢字のみで記されています。漢字をあたかも仮名文字のように使い、しかもその代表的な例が万葉集だったので、いつしか万葉仮名と呼ばれるようになりました。
 万葉集の編纂には大伴家持の関与が指摘されていますが、現在の形に最終的にまとめた人物が誰であるかは不明です。しかし奈良時代末期には成立していたと見るのが一般的です。収められた約4500首の和歌を見ると、その作者は皇族や貴族や官人から遊女や乞食まで非常に広範な階層の人々であることが分かります。しかしそれらの人々がみな漢字を書く能力があり、みずからの手で自分の和歌を直接記録したと考えるのは妥当ではありません。
 この時代、和歌を詠むこととそれを文字で書き記すこととは異質の作業だったと考えるのが自然です。漢字の知識がありそれを日本語の記録に応用できたのは、大陸からの帰化人やその2世あるいは3世といったごく一部の人々に限られていました。それが時代が下るにつれて、徐々に官人や貴族へと拡大していったのです。詳細は「日本語の視覚化」(2009.2.23-24)の中で紹介しています。(つづく)