蟻の穴(2)2009/03/12

 巷間、衆議院の党派別議席数が民意と大幅にずれていることを蟻穴と見る向きも増えている。だが本来、蟻穴は目に見えないほど微細なものである。国会の問題は大きすぎる。むしろ蟻穴がいくつも崩れたり拡がったり合併して大穴になり、ようやく目に見えるほどになったと考えたい。そこに大量の不況水が押し寄せた。しかも時期が悪い。かの総理大臣が「百年に一度」と認める大暴風雨期と重なってしまった。米国のハリケーンと中国の超強台風がいっぺんに襲いかかってきた。
 異国のことは知らないが、日本国における蟻穴はこの一・二年の間にできあがったものである。団塊の世代と呼ばれる人々が予定どおり一斉に引退し、企業にも役所にも例外なくあちこちに小さな隙間が数え切れないほどできてしまった。ひとつひとつはきっと誰も気づかないほど小さなものだろう。しかしそれが埋まっていないから社会全体では無視できないほどの歪みとなって、例えば国会の問題を引き起こしている。失業率の問題にしても団塊世代に対する合法的首切り分を加えれば、その数字は絶望的なものに変わるだろう。歪みの集積によって日本社会は明らかに均衡を失っている。濁流に呑み込まれる危機を救うのは官僚か、マスコミか、それとも国民に選ばれた政治家か、楽しみでもあり末恐ろしくもなる。