門外不出の桜(?)2009/03/31

東京練馬のコヒガンザクラ
 書画骨董など特に貴重な品物を秘蔵し決して屋敷外には持ち出さないことを門外不出という。ところが、旅行関連のサイトを眺めていたら「新宿副都心の西側にある新宿中央公園には約200本のサクラがあります。そのうち数本が高遠コヒガンザクラで、ソメイヨシノよりも先に満開を迎えます。ここの高遠コヒガンザクラは新宿区の友好都市である高遠町から贈られたもので、サクラとしては門外不出の品種です。」と記され、日付入りの写真も掲載されていた。
 気になるのは「門外不出」の使い方・用法である。書画骨董や仏像なら確かに倉庫や屋敷の奥深く仕舞い込めば門外不出にすることも可能だろう。だが、この場合は桜の苗木である。苗木を殖やすことは難しくないし、手に入れた苗木を移植することもできる。江戸時代でもあるまいし、いまどき禁制品扱いはないだろう。そう思って調べると世田谷区内にある都立公園・蘆花恒春園の花の丘区域にも「長野県高遠町よりいただいたタカトウコヒガン桜(15本)」があると分かった。しかも世田谷の方が本数もずっと多い。
 さらに調べていると、東京23区の西の端にある練馬区内の農家にも樹齢30年を超えるコヒガンザクラの大きな木があって毎年見事な花を咲かせると知人が伝えてきた。武蔵野を象徴するケヤキの大木には到底及ばないが、それでも空いっぱいに広がった枝々がどこぞの「門外不出」を嘲笑うかのように塀の外まで張り出して華やかに咲いていると教えてくれた。これでは用法どころか、記述の内容までが怪しまれてくる。