○無駄花(4)--夏野菜2009/07/08

 自分が年齢相応でないことを卑下して、よく「馬齢を重ねる」という。しかし漢名の「ばれい」はこの馬齢ではない。馬鈴とは馬鐸(ばたく)の意である。古代の遺跡から発掘される銅鐸と同じ素材の青銅で造られ、筒型をしている。内部には舌(ぜつ)と呼ばれる青銅の棒がぶら下がり馬の歩みで揺れると、周りの青銅に当たってチリンチリンと音がする。これにジャガ芋の花が似ているところから付けられた名前だろう。
 和名の由来は南瓜の場合と似ている。ジャガ芋の「ジャガ」は片仮名表記からも想像されるように外来語であり、ジャガタラを意味する。実際「ジャガタラ芋」と呼ばれたこともある。ジャガタラはジャカルタの古称として知られる。但しジャガ芋の渡来地としては正確さを欠く。日本にやって来るオランダ船の寄港地はジャワ島だった。近世の日本ではジャワ島を長くジャカルタと誤解していた。南米はアンデス山地が原産と言われるジャガ芋だが地球を半周するうちに身元不明となり、日本ではさらにジャワ島産がジャガタラ産と信じられ栽培されてきた。
 なお昨日の花は最も普通に栽培される男爵芋、今日の花は農林一号と呼ばれる品種である。皮の表面が赤い品種の紅丸は花の色は白かったと記憶する。子どもの頃、紅丸は珍しい品種だった。花の色も謎だが、北海道では実のなるところもあると聞く。栽培法は至って簡単なものである。だが、ひとつだけ注意したいのは芽が出たら畝(うね)にはしっかり土を盛っておく必要がある。こうしておかないと大きく育った芋が地中から顔を出し、日に当たって表面が緑色に変わってしまう。そうなると苦くて食べられない。何かと不思議の多い、しかし人類にはこの上なく有難い植物と言えるだろう。(次回は胡瓜の予定)

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