○ほおずき3--梅雨明け(7)2009/07/20

 ほおずきの漢名は「枕草子」にも見える酸漿(サンショウ)である。古代中国の人々が注目したのは、この植物の葉や袋の色でも、袋そのものでも、もちろん花でもなく、熟しかけた実の酸っぱさであった。漿とは汁の意であり、ここでは実の中に種子と一緒に含まれる液体を指している。ここに中国と日本との民俗の差があり、文化の差があるように感じる。
 一方、日本では「古事記」に「赤加賀知と謂へるは今の酸漿ぞ」とあって、中国から漢名が伝わる前は「かがち」とか「あかかがち」と呼ばれていたことが分かる。古代において「あか」は明るいの意であり必ずしも現代の赤と同じではないが、鮮やかな朱色を指すものであろうことは容易に想像できる。また「かがち」は「かがよひ」や「かぎろひ」と同じ起源をもつ言葉であり、静止していながら時々は揺れて光る物体を意味する。
 これらの記述は、ほおずきが日本古来の野草であること、海外から渡来したとしてもそれは二千年を遙かに超えた昔であること、列島の先人達がこれを野原にあって赤く明るく輝く不思議な植物と見ていたことを示している。実を口に含み、種子を吐きだして、膨らませて遊ぶようになったのは中国の影響か独自に考え出した遊びかは不明だが、平安期以後の比較的新しい遊びかも知れない。(つづく)

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