福島の桃2012/09/13

 我が家ではもっぱら到来物の桃の実だが、この桃だけは例年の桃といささか事情が異なっている。贈り主が丹精込めて育てた自作の品でもなければ、百貨店などに依頼した贈答品でもない。ただ「福島の桃」というだけで、あちこち転々とした末に我が家にたどり着いた数奇な身の上の桃の実である。妙な時代になったものだと嘆息せずにはいられない。

 これまでは岡山や山梨産の桃を食することが多かった。だが今回この桃の実を囓って、すぐに「これが自分の記憶にある桃の食感・桃の味だ」と感じた。身のしまり加減、固さ、歯ごたえ、そして甘さといっぺんに嬉しくなった。しかし、お礼を言いたくても肝心の育ての親・生産者が判らない。桃の実に口がきけたらきっと畑の様子くらいは教えてくれるだろうにと残念でならない。


 余談だが、俳句では桃の花は春の、実は秋のそれぞれ季題とされる。昨今は中元の贈答品として立秋前に出回るものが少なくない中で、この季節にまだ桃の実が食せることも教えてもらった。これも「福島の桃」のお陰である。

  伯母が来て 桃を手土産 母は留守  虚子


 


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