◆紅梅と白梅2010/02/23

 分類というのはどの部分に着目するかで結果も変わってくる。梅を例に採れば、花の色で分ける、花びらが一重か八重かで分ける、花の形で分ける、実の大きさで分ける、開花の時期に注目するなどいろいろな基準や視点がありそうだ。だが医薬品と健康食品の区別を意識せず薬局の主に勧められるまま高価な健康食品を買って飲み続け、これを医者が処方したがらない秘薬と信じ込む老人もいるように、言葉というのはよほど注意しないと思わぬところですれ違いを起こし、気づかぬまま使われ続けることも少なくない。

 食品を医薬品と信じ込んで飲み続けても心理面への影響と財布の中身への影響はあるだろうが、それが直ちに健康や病状に深刻な被害をもたらすとも思えない。だが医薬品を食品と信じて食べ続けたらどうなるだろうか。薬害などという言葉を持ちだすまでもなく、結果の恐ろしさについては容易に想像がつく。食べるほどの医薬品が手に入らないようにするためにも、この種の商品については法的な規制や対策が必要と多くの人が考えるだろう。


 話を元に戻して、では梅の場合はどうだろうか。苗木市で紅梅と聞いて買い求めた梅が無事に根付き、めでたく花芽を付けた。ところが咲いてみたら、これがどれも白い花だった。買い主は騙されたと思うだろうか、どこかで入れ違ったと思うだろうか。狐に摘まれたような気分かも知れない。この話は、白梅とか紅梅といったごく普通のありふれた言葉であっても時にその中身をよく確かめないと、思わぬ誤解や勘違いの因になることを教えている。世の中には多くの人が抱く白梅や紅梅のイメージとは別の、その道のプロだけが知る紅白を分ける基準が存在するのである。(つづく)

  白梅の青きまで咲きみちにけり 小坂順子