■冤罪--新釈国語2009/06/05

 罪のない者に無理に罪を着せて刑に服させること。広義には罪がないのに疑われることも含む。漢字の冤はワ冠が覆いを表し、無実の象徴である兔(うさぎ)を上から覆って動けなくしている状態とも、元々兔には事を曲げるの意があったとも言われ、この一字のみで「道理を曲げて無理に罪を着せる」意となる。「罪」は字義に疎い人にも理解しやすいようにと書き添えたか、「えん」のみでは同音が多く紛らわしいと考えたか、あるいは語調を整えるために添えられたものであろう。
 現代においてもなお冤罪が生まれる背景には罪を憎むあまり時に理を忘れる人間社会一般の弱さがあり、それを世論にまで押し上げるマスコミの働きがあることを無視できない。しかし誤った刑の確定という狭い意味の冤罪について考えるならば、この過程に直接関わることができるのは、その事件を「犯罪」と見なして捜査に当たる司法警察職員、その結果を受けて公訴を提起する検察官、そして公判で審理を担当する裁判官の三者のみである。これらの全てが「疑わしきは罰せず」という司法手続き上の大原則を無視して無理な判断を下すか、またはそれぞれの能力に限界があることを忘れて(もしくは限界に気づかずに)無理に際どい判断を下すかしたときに冤罪は生まれている。
 前者の場合は弁護人の説得力の不足や注意喚起力の不足があると冤罪を防ぐことは難しく、後者の場合も弁護人の注意喚起力の不足や能力不足があると罪を晴らすことは望めない。被告人をただただ絶望させることになる。

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