○百匁柿--実りの秋2009/10/18

 子どもの頃、母の遣いで時々駄菓子屋に行かされた。買い物だから拾円札か伍拾円札を持たされるはずだが、そうした記憶は全くない。お金は持たず、ただ風呂敷だけを持たされて出かけたことを覚えている。そして決まって「花林糖を百匁(ひゃくめ)ください」とか「薄荷糖を百匁ください」と店先で口上を伝えた。
 いまパソコンに「ひゃくめ」と打ち込んでも、正しく百匁に変換される気遣いはまずない。そんな親切な辞書は自分でつくるしかなくなった。原因は1959年(昭和34)の元旦から全面的にメートル法が採用され、それまで広く使われていた尺貫法が廃止されて久しいからである。当時、学校では混乱に備えて対策が施され、教師が口を酸っぱくして「これからは斤(きん)や匁(もんめ)ではなくグラムを使うように」と指導した。もちろん換算の方法についても熱心に教えたはずである。
 このとき、お遣いの単位が300グラムに替わったのか、それとも400グラムだったのかは俄に思い出せない。相変わらず従来と同じ百匁ではなかったかと思う。ただ計算のできる母が時々ぶつぶつ文句を言っていたことだけは確かだ。制度の変更に乗じて駄菓子屋がきっと何か上手いことをしたのだろう。
 写真の柿は彼岸過ぎに撮したもので、百匁柿と呼ばれる品種である。まだ色づき始めたばかりだが、11月の収穫期には見事な朱色に変っている。室(むろ)などに熟すまで置いて、それから熟れ熟れのとろりとしたところを匙(しゃじ)で掬って食べる。実際の重さは百匁(375グラム)より少し軽いかも知れない。

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