■突然変異--新釈国語2009/10/06

 遺伝子の構造や染色体の構造に、その親がもっていた構造とは異なった変化が現れること。20世紀初めの1901年にオランダの生物学者ド・フリースが発見しmutationと命名した現象を翻訳した言葉。この変化が遺伝するかどうかをめぐっては議論があったが、遺伝する場合もあれば遺伝しない場合もあって一概には言えない。なお発見の時期は日本では明治34年、日露戦役の3年前に当たる。そのためか大正時代につくられた辞書には項目がなく、突然は「だしぬけなるさま。にはかなるさま」と説明されるのみである。
 生物学など学術用語にはやはり漢語風の訳語が適していると言えよう。もしこれを和語によって「出し抜けに変われる様」などと翻訳すると、日常用語との区別が難しくなる。日本語が多くの事象・事柄をその意味も含めて視覚的に表現できる、世界にも希な優れた言語であることの証明でもある。写真はムラサキツユクサが突然変異によって「白花露草」に変異したものである。

○蓼(3)--野の花2009/10/06

 そろそろ落ち鮎漁も終りを迎える。今年の鮎のシーズンはお仕舞いである。夏、鮎の塩焼きに欠かせないのが、このタデの葉である。7月のまだ若い葉を採ってきて小さな擂鉢で磨り潰す。それに酢を加え、よく混ぜ合わせたものが蓼酢である。葉の緑が酢を染めて、きれいな調味料に仕上がる。酢は普通の穀物酢でよい。
 これをそのまま塩焼きに振りかけても、小皿に入れて箸で摘んだ鮎の身をつけながら食べてもよい。今なら秋刀魚の塩焼きに徳島のスダチだが、夏はやっぱり鮎の塩焼きに蓼酢だろう。いずれも列島の先人達が編み出した、季節の知恵にほかならない。

  鮎おちて焚火ゆかしき宇治の里 蕪村

 このところの雨天続きで火が恋しくなって来た。油断して風邪を引いても詰まらぬ。流行り風邪に罹って落命でもしたら、もっと詰まらぬ。用心しよう。(つづく)