○通草の季節(1)--秋色2009/10/20

 夏の間ずっと緑色だったアケビの皮が秋の彼岸を過ぎる頃から徐々に紫に色づき始める。そして10月に入ると縦に割れ目が見え始め、ある日ぱかんと二つに割れて中身がのぞく。皮の薄いアケビほど中の身は透き通って、もちもちしている。ほっそりとした身に黒い種子がぶつぶついっぱい透けて見える。皮はひどく苦いが中身は実に甘くて美味い。口に含んで味わい、種子だけばっと吐き出す。だから穫ったらすぐにその場で食べる。家で食べたのは、父が山から持ち帰った御土産のアケビだけだった。父は勢いよく種子を庭に吐き飛ばす子供達を嬉しそうに眺めていた。

 皮の厚いアケビもある。山形県の越後に近い町には、この皮を使った料理もあると聞いた。皮の厚いアケビの中身は太くて大きい。だが単に白いだけで透き通ってはいない。もちもち感もないし、甘みも少ない。だから見つけても食べることは殆どなかった。長じて、その料理があると聞いたとき、あんな苦い物をよくも食べる物好きがいる者だと感心した。何でも工夫次第ということだろうが、そこまで手をかけて食べようとは思わぬ。それより毎年、始末に困るほど生って生って手を焼くムベの上手い料理法がないものかと思案している。(つづく)

  山ふかく遊ぶ子に会ひ通草熟れ 丸山帚木

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