◎漢名探し(10)--アジサイの季節2009/06/15

 白居易は日本では専ら白楽天の名で親しまれてきました。早くから遣唐使などによって紹介され、平安時代以降の知識人に大きな影響を与えています。紫式部や清少納言などの逸話を紹介するまでもないでしょう。
 ここまでに明確になった点を整理すると次のようになります。

1.万葉の時代に「あぢさゐ」と呼ばれる植物があった。
2.その植物が現在のアジサイとどう関係するかは必ずしも明確ではない。
3.この植物に対する万葉人の見方は一様ではなく、否定的なものとその逆の目出度い花の2つが知られている。
4.漢名の「紫陽花」が生まれたのは9世紀前半の唐代である。従って万葉の時代にこの漢名は存在しなかった。
5.漢名が紫色をして香りもよく可愛い綺麗な山花であることは伝わるが、それがアジサイに該当する植物であるかは不明である。

 ではどうして、この漢名が「あぢさゐ」と結びついたのでしょうか。文献として残っているのは、平安中期の学者で歌人としても知られた源順(みなもとのしたごう)による「倭名類聚鈔」です。様々な漢語を漢籍から引用して語釈と共に示し、その音注と万葉仮名とを付ける際にどうやら早合点(?)したようです。この解釈は、やがて江戸時代に編纂された「和漢三才圖會」にも引き継がれて広く日本列島全体に及ぶ理解へと発展してゆきます。
 写真は代表的なガクアジサイです。万葉人も梅雨の季節に、この花を見ていたのでしょうか。次回はいよいよ最終回、本日20時頃の予定です。

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