○梅の実は青し--夏便り2009/06/18

 昔、梅の実は白加賀と呼ばれる品種のそれが最上と信じていた。黒い点々のふすべもなく全体が薄緑をしていて気品がある。実の大きさもまずまずだ。たくさん収穫できる生(な)り年は子供心にも嬉しかった。収穫の日ははしゃぎ回り、木にも登り活躍した。それが大人になって、ある時、梅干し用には南高梅と呼ばれるさらに上の品種があると知って驚いた。
 八百屋の店先に並ぶ南高梅の多くは青梅ではない。黄色や薄紅色に熟している。これを長い間、売れ残りの熟しすぎと思っていたのだ。梅の実の漬け物は青梅を干さずに固いまま紫蘇と漬け込んで、その歯ごたえを楽しんできた。柔らかい梅干しは漬け損ないだろうと信じて疑わなかった。あの酸っぱさにも堪えられなかった。干して漬け果肉の多さと柔らかを競う梅干しが製法も使う梅の実も梅漬けとは全く異なるものであることを知らなかったのだ。

  梅の実は葉よりも青し葉の中に  八木絵馬

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