○桜桃忌--夏便り2009/06/18

 忌は忌日(きにち)の意で、故人の命日をいいます。明日6月19日は作家太宰治を偲ぶ桜桃忌です。しかしこの日は太宰の誕生日には当たりますが命日ではありません。強いて言うなら、その遺骸が発見された日に当たります。命日は入水自殺を決行した1948年(昭和23)の6月13日とするのが一般的です。
 桜桃は太宰の最後の小説(「櫻桃」実業之日本社、昭和23)に付けられた題名です。行き詰まっては心中を繰り返し、最後に息詰まって帰らぬ人となった太宰ですが、その作品や為人(ひととなり)には凡俗と重なり合う部分と凡俗には容易に窺い知ることのできない闇の部分があるように感じます。それ故に人気も高いのでしょう。
 明日は奇(く)しくも太宰生誕100年、長寿国日本では精進の人であればまだ存命しているかも知れない年齢です。いたずらに商業主義の宣伝に踊らされることなく、太宰が遺したものと太宰後に日本人が獲得したものとについて考えてみるよい機会でもあります。
 写真は虚子の句に倣って撮したものです。サクランボは山形県東根市から届いた佐藤錦です。サクランボの漢字表記には桜桃の2文字が使われます。この上なく贅沢な季節の果物と感じます。贈り主の有難く温かな気持に感謝しながら頬ばっています。

  茎右往左往菓子器の桜桃  虚子

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