●月(にくづき・4画) 32009/08/02

3.にくづき
 新字体に統一される前の月の字は肉月と区別され、横に2本並ぶ梯子の右端が僅かに離れていた。但し昔の活字は摩耗が早く紙型の痛みも早いので小さな活字で印刷されていると、見ただけでは区別が付かない。4号くらいの大きさがあれば、すぐに分かるだろう。肉月は梯子の左右が2本ともしっかり繋がっている。
 さて元々肉部に属した有が誤って月部に入れられたことは既に述べた。漢の時代のことである。服のことも話したが、能(ノウ)もなぜ肉月なのか説明がつかない。この字のム+月はエン(捐から手偏を取り去った字)という黒を表す字に由来し、右の2つのヒは獣の意である。黒い獣つまりクマの原字と見る説が有力である。
 他の大方の字はたいてい身体の一部に関係しているから、ここで改めて説明する必要もないだろう。例えば肩は旧字体では最初の一画は一ではなくノを横に倒した形をしていた。これにコを書いて、さらにノを付けた。つまり左右の肩をかたどった象形文字である。月はもちろん肉の意でよい。育(イク)の字の月も肉だが、この字は形声文字であり、肉の役割は音だけだと言われる。大事なのはその上に載る鍋蓋(卦算冠)とムの部分とにあり、これが母の胎内から生まれ出る子どもを表していた。つまりこの部分は象形文字になっている。
 肯定の肯(コウ)の字は会意文字である。骨と肉とが合わさって出来上がったと言われる。上に載る止が骨の略字であり、骨に硬く付いた肉が原義である。敢えて、うべなう、がえんじるなどはいずれも後から借用によって付けられた意味と言われる。胡座(コザ・あぐら)や胡弓(コキュウ)の胡(コ)は北方異民族の「えびす」を指すときに使われるが、これも元は顎の下の垂れ下がった部分の肉を表すためにつくられた形声文字である。古が音を表し喉(コウ・のど)に由来すると言われる。漢字の成り立ちには、なかなか一度くらいの説明では理解できない点が多く難儀する。

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