○通草の季節(3)--秋色2009/10/22

 さて通草だが、これを中国語の辞書で引くとカミヤツデとその対訳が記されている。カミヤツデとは東南アジアの亜熱帯が原産とされる植物で、素人目にはヤツデのそっくりさんとも映るよく似た常緑の低木である。ヤツデもそうだが、このカミヤツデも幹はさほど太くならないから力を込めればぽきんと折ることができる。現れるのは白いスポンジのような髄である。木材としての利用価値はまずないだろう。だが、この髄を使って一種の紙をつくると記すものもある。どうやらこれが紙八手と呼ばれる原因のようだ。

 カミヤツデは漢名を通脱木ともいう。漢方の生薬・木通と何やら似通った呼称ではないか。通脱とは無頓着、世事にこだわらないの意である。アケビを通草と記す起源はおそらく平安時代の承平年間に編纂された源順の「倭名類聚鈔」まで遡るだろう。この辞書が漢語の「通草」に阿介比加都良(アケビカヅラ)と万葉仮名で和訓を記したことから以後の日本の辞書はこの関係を逆転させ、アケビという植物には猫も杓子も無批判に通草という漢字を宛てるようになった。これが内実であろう。誠に御寒い話である。

 写真は2ヵ月以上前の今年8月初めに撮影したものである。まだ実が青々としている。(つづく)

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