音声表現としての日本語2009/02/03

 日本語という言語の構造は、日本列島に暮らす人々が日々の生活と風土の中で築き上げたものである。漢字や仏教の伝来が政(まつりごと)の仕組みを変え信仰の対象を多様にして人々の言葉数を増やし、その言語生活を豊かにしたことは疑いない。同様に明治期の文明開化も日本語の語彙数増加に大きく貢献する出来事であった。
 しかし、例えば日常生活を示す基本的な動詞の数々は、見るも、聞くも、話すも、歩くも、走るも、狩るも、取るも、祈るも、食べるも、飲むも、眠るも、起きるもみな漢字の伝来や文字の創始を遡るはるか太古の昔から人々の音声表現の中で使われていた。こうした基本的な音声表現が既に広く列島で行われていたからこそ、それらの音声に新来の漢字を当てて記録するという新しい方法の試みも可能だったのである。