くら(2)2009/02/06

 「くら」は大切なものを収めておく空間としての場所や構造物としても理解された。神前に供える品々の置き場所として設けられた台には「おきくら」の呼称が与えられたし、書類や書物の収納場所は「ふみくら」あるいは「ふぐら」と呼ばれた。東大寺の正倉院や唐招提寺の経蔵として知られる「あぜくら」も、こうした「くら」の代表的な例である。宝物や経典の保管用に造られたこれらの「くら」は世界に誇る歴史的な建造物であり、保存性に優れた人工空間の代表格でもある。他にも、販売のために商品を並べる場所や棚が「いちくら」あるいは「いちぐら」と呼ばれたことが知られている。
 鎌倉とその周辺地域に遺る「やぐら」もこうした人工的な「くら」の一種と考えられる。但しこちらは建物ではなく、砂岩や泥岩の急斜面を横に掘り削って造った空間である。「や」はこれらの空間が造られた、この地方独特の「やと」あるいは「やつ」と呼ばれる地形を示している。
 雪国秋田県の横手地方に伝わる子どもたちの風習「かまくら」の「くら」も、人工的な空間として理解できる。大きな竈(かまど)の形に造られたこれらの雪室には祭壇が設けられ、子どもたちが中に入って遊べるだけの広い空間が備わっている。「かま」は竈を表すと見るのが自然だろう。

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