行く春--大家の墓地2009/05/28

二百年前からここにこうして建っているのです…。
 先日、気になっていた墓碑銘の調査に同行した。江戸時代から続く大家(たいけ)・さる造り酒屋の先祖が眠る墓地である。時代が明治に変わり、武家に用立てた御用金は踏み倒され、参勤交代も廃されて街道筋の往来がめっきり減ってしまった。時の当主は維新の声を聞く間もなく、そうなるのを見越して、より江戸に近い土地へと店を移した。もう4代も前のことだという。
 墓碑を見て回って気づいたのは早世した者が多いこと、墓碑銘に文人の香りが残ること、村人から慕われていたと思しき夫妻が少なくないこと、いずれの代も夫婦仲睦まじらしきことであった。墓地最後の墓石は昭和30年代の建立であったが周囲に比して、これだけが小さく貧相に見えた。その意味するものが何なのか、時代なのか、世相なのか、墓石に対する意識の変化なのか、いまも気になったままである。

 ゆく春のかしぎてたふれざる墓石 加藤覚範

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