天然物と養殖物(4)2009/02/26

 野菜や果物の味の甲乙を野生種や原種のそれと比較して論じる人がいないことはすでに述べた。野菜も果物も人為的な植物の代表格である。人間の知恵と努力が改良した、太古の昔には存在しなかった食用植物である。水生故に天然以外は一律に養殖物と見下し、陸生の野菜や果物なら有機栽培と持ち上げるのは明らかに公平さを欠く議論だ。
 養殖物を天然物と比較して味が劣るとか価値が低いと見なす時代はそろそろ終わりにしたい。玄界灘で釣り上げた真鯛の食感が養殖池で育った真鯛の比でないことは否定しない。が、いつまで地球環境の現状がそうしたこだわりを許しておくか予測することは困難だ。こだわっているだけでは野菜や果物の歴史が教える先人の知恵を活かすことはできない。
 これからは養殖物同士で味や食感を競い合う時代に変えてゆかねばならない。養殖池の鯛であっても身が引き締まって味も良ければ、それなりの評価が与えられるべきである。食の安全を最優先に、人工栄養や薬品の使用は避けて無農薬・有機栽培的な飼育法を工夫し、さらに味や食感の追求も進むような食の新しい文化と風土とを築く必要がある。それが21世紀初頭に生きる者の使命だろう。

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