日本語の視覚化(2)2009/02/24

 日本語の視覚化には漢字がもつ2つの機能が利用された。ひとつはその漢字に対して中国の人々が発する音声をそのまま借りる方法である。中国音には列島では耳にしない多様な音が混じるため一部は省かれたり、類似する日本語音に置き換えられることもあった。こうして「やま」は例えば「「也末」と、「ひと」は例えば「比登」と視覚化することが可能になった。
 もうひとつの方法は、個々の漢字が表す事物や事象などを列島の人々が呼ぶときの音声を借りるものだった。1音節に漢字1字を充てる単純な借用が増える中で、この方法は「夏」から「なつ」を借り、「樫」から「かし」を借りて「なつかし」を「夏樫」と表すような場合に利用された。
 言葉を目に見える形に置き換えることが可能になると、行政面での布達や報告への導入が進み、漢字は役人必須の知識になっていった。また皇族や貴族を中心にこの方法を習得する者が拡がり、伝承する歌謡や日々の感慨を漢字によって視覚化することが行われるようになった。さらに朝廷では、それまで誦習によって伝えられていた帝紀や旧辞を漢字を用いて遺そうとする試みが始まった。

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