不思議の国ニッポン2009/04/25

落ち行く先は雲の果て…。
 四月も余すところ来週だけとなった。早いところは今日から黄金週間入りするそうだ。今年の連休は不況と円高のお陰で例年になく長期間だったり、海外旅行に出かける人も増えそうだと聞く。不景気だ赤字だとマスコミが騒ぐほどには街に悲壮感が漂っていない。行き交う人の表情にも思い詰めた様子はない。週末の盛り場にはかなりの人出があったし、スーパーの安売りにもどっと買い物客が押し寄せる。
 しかも目指すは国産黒毛和牛など上等肉をまとめ買いすることである。薄切りされた霜降り牛肉を何パックも買物篭に入れた中年・初老の男女が精算所の前に並んでいる。決して食べる物に困っているわけではない。もちろん飢えているわけでもない。単に高級品を少しでも安く手に入れたい、得をしたい・得をした気分に浸りたい、その一念で行動しているように見える。石油ショックのときのような物不足でもない。どの店にも商品が溢れている。
 いま最も気の毒なのは大学の4年生だろう。新学期が始まったというのに授業にも研究室にもなかなか顔を見せない。就職が気になって落ち着いて机に向かうことができない、と口々にこぼす。一日中、携帯電話やパソコンとにらめっこしながら悶々としている。そして説明会がある・面接が受けられるかも知れないと聞けば何を置いても駆けつける。このままでは仮に就職が決まっても、肝腎の卒業が延期という事態にもなりかねない。
 そんな状態の学生たちに競って説明会を開いたり内定を出したりして本当に問題がないのか、企業の経営者には是非考えてもらいたい。将来の産業の担い手たちにそんな思いをさせることの意味はあるのか、産業界の指導者は真剣に考えるべきだ。若者たちにそんな思いをさせることが国の将来にどういう影響をもたらすのか、政治家はもっと深刻になるべきだ。