五月の風(11)2009/05/13

睡りいまだ足らず
 山吹の話を別の欄「簑ひとつ山吹」に譲ったので、今日もちょっと脱線して春の花の咲き残りをご覧に入れます。唐の玄宗皇帝が楊貴妃の艶(なま)めかしさを評して「海棠睡未足」(かいどうねむりいまだたらず)と言ったと「唐書・楊貴妃伝」は伝えています。単に寝不足というだけでなく、楊貴妃には前夜遅くまで酒宴につきあわされた酔いも残っているのであろう、その多少の乱れも感じられていっそう艶めかしさが募るのだと解説した本もあります。
 雨上がりの海棠には「海棠の雨に濡れたる風情」という表現もあります。飛びきりの美人がいつになくうちしおれた様子でいることをたとえたものだそうです。「そういう光景に出くわすと、何と言うか男は身震いがしてくるものだ。君たちにはまだ分からんだろうけど」と昔、漢文の教師がにやにやしながら教えてくれました。この写真を見ていると脂ぎった教師の顔が玄宗皇帝に重なり、会ったこともない楊貴妃を哀れに感じるから不思議です。

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