◎アジサイ回顧(7)--夏便り2009/06/30

  玉衣のさゐさゐしづみ家の妹に物言はず来にて思ひかねつも

 次は「さゐ」の検討です。上掲の一首は柿本人麻呂による相聞歌です。やはり「狭藍」が詠み込まれ、「狭藍左謂沈」と記されています。大槻は「さゐ」を「さあゐ」からの転としていますが、契沖の言う「さゐ」も恐らくは「さあゐ」から転じたものでしょう。藍(あゐ)は青(あを)と同根の言葉です。つまり同じ青系の色を「さゐ」とか「さあゐ」と呼んでいたのです。人麻呂の「さゐさゐしづみ」も同じ青系の色を詠んだものでしょう。それを今風に言えばブルーな気持の象徴として使ったのです。
 大槻の言う「真藍」と契沖の言う「狭藍」の違いは万葉仮名として用いられた「真」と「狭」の違いだけです。これが青の色味として、目の前のアジサイにどれくらいの色の差を要求するかは残念ながら不明です。「さ」は狭衣、狭霧、狭織、狭筵、狭山、小筒、小鳴き、小百合、小夜、小夜中など多くの言葉の接頭語として用いられています。それらの中には少し、小振りといった解釈が適用できそうな例もありますが意味不明のものもあって、差の有無も色味についても軽々に論じることは困難です。これらの微妙な差は、記事と一緒に掲載した水色系のアジサイたちをご覧になればお分かりいただけると思います。
 これで今年のアジサイ関係の記事は全て終了します。最後にご紹介するのは一輪で一度に七変化を演じる西洋アジサイです。撮影日は今月2日の早朝でした。(完)

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