○蓮華躑躅--夏便り2009/06/26

 先祖の命名には時折おやっと思うような理解しがたいものがあって困惑させられる。この高原に咲くツツジの色もそのひとつである。まだ田起こしが始まる前の田圃に咲く蓮華草の花は誰が見ても紅色ないしは薄紅色系であろう。ところが同じく蓮華の2文字を冠しながら、ツツジの方は朱色である。これを紅色系と感じる人はいまい。
 信州の霧ヶ峰から車山に連なる高原は今がちょうど見頃である。昔、大菩薩峠でこの群落に出会ったのは7月の初めだった。ところが日光や赤城高原あたりでは1ヵ月以上も早く5月には咲いていたように記憶する。広い牧場の至る所にこの花の大きな株があって辺り一面、朱色に染まっていた。高地に行くほど、その色は濃さを増すように感じる。
 ところがこの花を平地に持ってきて庭に植えると4月の中頃には咲いてしまう。しかもその色たるや何とも上品というか、物足りないというか、ごく薄い朱色なのである。高原で見るような、ちょっとどぎついと感じる朱色に染まることは決してない。咲いてもすぐに萎れるような気がする。まさか「野に置け蓮華草」でもあるまいにと思ったものである。
 写真の花は、畑の隅で咲いていたものを見つけて撮影した。畑とはいっても標高が900メートルはある高原の一角だ。それでも少し色あせたように感じるのは、近くに人間が住まうせいだろうか。

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